資産凍結のリスクに備える
親の「想い」と
「財産」を守る
家族信託
入門ガイド
発行:リーガルニーズ司法書士事務所
発行日:2026年1月
親御様のための資産が、
使えなくなるリスクをご存知ですか?
親御様の介護費用や施設入居費用。「いざという時は、親の預金や不動産を充てれば大丈夫」と考えていませんか?
実は、認知症などで判断能力が低下すると、ご本人の財産を守るために法律上のロックがかかり、預金の引き出しや不動産の売却が難しくなる「資産凍結」という状態になります。
本資料では、親御様がお元気なうちに「将来の財産管理のルール」を決めておくことで、ご本人もご家族も安心できる「家族信託」という仕組みについて解説します。
ストーリーでわかる「資産凍結」
平穏な日常と急変
実家で一人暮らしの父(75歳)が突然の入院。認知症が一気に進行してしまう。
「施設の入居金、実家を売ればなんとかなるはず」
銀行・不動産屋での拒絶
窓口で手続きを断られる。「意思確認ができないと解約・売却できません」
「えっ、父の介護のためのお金なのに!?」
専門家の解説
これは『資産凍結』です。悪用されないよう守られていますが、活用もできません。
後悔
「まさか実家があるのにお金が使えないなんて…もっと元気なうちに…」
Point
悪意がなくても、判断能力がない状態での契約行為は法律で無効とされます。
「資産凍結」は、本人の財産保護のために起きる法律上の結果なのです。
ルールを決めるのは親自身。
「家族信託」の基本
家族信託とは、信頼できる家族に財産管理を託す契約です。
「親御様(委託者)が、自分のために、どのように管理・処分してほしいか」をあらかじめ決め、その目的に従って管理を任せる制度です。
委託者(親)
財産を持っている人。「誰のために、どう使うか」というルールを決めます。
受託者(子)
財産を預かる人。親が決めた目的に従い、管理・運用する責任者です。
受益者(親)
利益を受け取る人。生活費や介護費はすべて親のために使われます。
重要な注意点(分別管理と忠実義務)
受託者となったお子様は、親御様のために誠実に事務を行う義務(忠実義務)を負います。ご自身の財産とは明確に分けて管理する必要があります。
成年後見制度との違い
「保護」か「想いの実現」か。目的と守り方に大きな違いがあります。
| 比較項目 | 成年後見制度 (法定後見) |
家族信託 |
|---|---|---|
| 制度の主眼 | 「財産保護」 財産を減らさないことが最優先。 | 「本人の希望の実現」 元気な時に決めた目的に沿った活用。 |
| 誰の意思か | 家庭裁判所・後見人 「今の本人にとって必要最低限か」 | 元気な時の本人の意思 契約時に定めた方針(信託目的)に従う。 |
| 財産の活用 | 現状維持が原則 生計維持に必須でない売却や投資は不可。 | 契約の範囲内で可能 「空き家なら売却」等の定めがあれば可能。 |
家族信託が柔軟と言われるのは、後から家族が自由に変更できるからではありません。
「契約を結ぶ段階(元気な時)で、家族の事情や希望を契約内容に細かく反映できるから」です。
よくある活用事例
事例1:空き家になる実家の売却
- 親の想い
- 「戻る見込みがなければ売却し、介護費にしてほしい」
- 家族信託の効果
- 親が認知症になっても、子は裁判所の許可なくスムーズに売却手続きを進められる。
事例2:アパート経営の承継
- 親の想い
- 「先祖代々の土地を守りたい。管理で入居者に迷惑をかけたくない」
- 家族信託の効果
- 大規模修繕や契約更新を、子が親に代わって行える。家賃は引き続き親の生活費に。
【別紙】家族信託・組成コスト概算表
専門家報酬と実費の一般的な目安です。
A. 専門家報酬 (設計・契約書・登記)
| 3,000万円以下 | 33万 〜 44万円 |
|---|---|
| 〜 1億円 | 評価額の 1.1% |
| 1億円以上 | 0.55% 〜 0.88% |
B. 実費 (必ずかかる費用)
| 公正証書手数料 | 3万 〜 10万円 |
|---|---|
| 登録免許税 | 土地0.3% / 建物0.4% |
モデルケース:ご自宅2,000万 + 預金1,000万 = 3,000万円の場合
成年後見制度(専門家後見人)の場合、月額2〜6万円が一生涯かかり続けます。
家族信託は初期費用のみで、ランニングコストは原則0円です。
